真詩 6
【おっくう】
人気芸能人女性の
ブログは
台風状態を
数年保持していた
そこでは絶賛やら非難やら怒号やら希求やら
渦巻いて
異様な洋上のように
荒れていた
詩人となって
荒れる洋上を
まんなかへと
するとそこは
静かな場所となっていた
荒れる世界
争乱世界の
まんなかなら
静か
詩人にしたって
それをとやかく
詩として
表現するのは
おっくう
【ひとりの言葉】
集まった夢は
だれの夢?
あなたの声は
どこに行く?
たった1人の言葉が
あなたを満たす
【彼らの速度】
歩幅を合わせて
彼らは出掛けた
嘘から溢れた
嘘の例えに習って
彼らは急ぐ
彼らは急ぐ
彼らの速度は
とても悲しい
【いまどこかの】
いまどこかの
砂浜に
波が寄せて
いま私の心に
悲しみが届く
私は
悲しみの意図を追わない
ただあなたの声を探す
いつも
どこにでもある
あなたの声を
【原初の気持ち】
たけ高き建造物の
バルコニーに
群衆
しきりに
海を見下ろす
原初の生誕を
何度でも
確認
している
いま
空から原初が
降りてきて
群衆を
素通りする
真詩 5
【山道】
山で
行き止まり
じゃない
山が
寂しさだとしたら
寂しさに含まれる道は豊かだ
雨が降っている
山の奥
山の麓
鳥たちの声
さまざまな声
【あてのないアンテナ】
近くの川を渡り
低い完成を笑い
高い虚空を避け
小さな声に頷き
大きな歌に誘われ
遠くの都会をくぐり
あてのない
アンテナは行く
【丘のそら】
日が照れば
日が照る丘と
なりにけり
雲海を
棚引かせつつ
なだらかにして
はるかなりけり
【天の川】
行く先々で
たましいを
連動させながら
はるかなる流れ
【島バナナ】
ある日
島バナナ
道の果てに
あらわれて
ひとしきり
場を賑わす
努力して
くふうして
賑わいを与えた
当然の賑わい
として
聴衆は受け取った
ある日
島バナナは言った
君たちは
島バナナじゃない
聴衆は
やがて
言った
どこかに
愉快な林檎が
いるらしい
君たちは
林檎でもない
真詩 4
【歩道橋】
声には
万華鏡のような
世界のそれぞれの
おとがすべて
こめられている
例えば歩道橋で
あたたかい気持ちに
なったなら
それはあなたを
愛する者の
はるかな声
【旅】
旅に出たいなあ
トマトとニンジンだけ持って
いや
なにもいらない
旅に出るのに
旅以外に必要なものなんてないのかもしれない
旅に出たいなあ
【遠い声】
猫が呼ぶのは
僕じゃない
はずなのに
なぜ声が
届くのでしょうか
【人知れず】
今朝あなたより先に
泣いたのは
窓
だったのかも
しれないのです
【そら】
存在は
いつまでも
存在しないでいつづけることなど
できないのでしょう
明け方の空
【ビル群】
巨木から
生まれた果実
抱き上げて
高く掲げて
にこやか
明け方の
バス停で
待っていた
大きな女は
そういう女だった
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